共通 電験

[電験]交流電圧降下を求める際の厳密式と近似式の使い分け

2020年12月21日

どうも、いちにょきです(^^)/

電験でよく出題される問題に、交流系統の電圧降下を求める問題があります。

電圧降下を求める式には厳密式の

\begin{eqnarray} E_s = \sqrt{(E_r + IR\cos{\theta} + IX\sin{\theta})^2}^* \\ ^{*}\overline{+ (IX\cos{\theta} - IR\sin{\theta})^2} \end{eqnarray}

と、上式で\(\dot{E_s}\)と\(\dot{E_r}\)の位相差(相差角)が小さいとして近似した

\(E_s \simeq E_r + IR\cos{\theta} + IX\sin{\theta}\)

の二種類があります。

今回はこの厳密式と近似式の使い分けについて解説していきます。

電圧降下式の基本

電圧降下式の導出については様々な参考書やWEBで説明されているため、ここでは簡単な説明にとどめます。

\(E_s\): 送電端電圧、\(E_r\): 受電端電圧、\(\theta\): 力率角、\(\delta\): 相差角、\(\dot{I}\): 電流、\(R\): 抵抗、\(X\): リアクタンス

図から三平方の定理より

\begin{eqnarray} E_s = \sqrt{(E_r + IR\cos{\theta} + IX\sin{\theta})^2}^* \\ ^{*}\overline{+ (IX\cos{\theta} - IR\sin{\theta})^2} \end{eqnarray}

が成り立ちます。また、相差角\(\delta\)が小さいときは、\(IX\cos{\theta} - IR\sin{\theta}\)を無視して

\(E_s \simeq E_r + IR\cos{\theta} + IX\sin{\theta}\)

の近似が成り立ちます。

電験3種における使い分け

電験3種では近似式を使えば問題ありません。ただ、近似式丸暗記ではなく、相差角が小さいという仮定があってこの近似式が成立していると理解しておくことで応用力はかなり高まるでしょう。

電験2種・1種の一次試験における使い分け

基本的に電圧降下を計算で求めさせる問題が出ることはほぼないです。

また、選択式なので使い分けについて悩む状況は発生しないと思われます。

電験1種の二次試験における使い分け

1種二次試験の問題冊子冒頭にはこんな記述があります。

これを見れば近似式が使えないことは明白です。

電験2種の二次試験における使い分け

さて、一番難しいのが2種二次試験です。

2種二次試験の問題冊子には1種のような記述はないので、問題文に明記がない限り自分で判断しなければなりません。

近似式が成立するためには、相差角\(\delta\)(\(E_s\)と\(E_r\)の位相差)が小さいという条件が必要です。

相差角が小さいということが問題文中に明記されていれば、近似式を使ってOKです。

また、線路亘長(長さ)が短いという記述がある場合も相差角が小さくなるため、近似式を使うことができます。

上記のような記述がなく、相差角が小さいと断定できる記述が見つからない場合で、もし\(X\cos{\theta} - R\sin{\theta}\)が簡単に計算できるのであれば、それを計算して0に近いかどうかで判断するのもよいでしょう。

上記のような記述もなく、\(X\cos{\theta} - R\sin{\theta}\)の値も0に近いといえない場合は、厳密式で解きましょう。

交流電圧降下を求める際の厳密式と近似式の使い分け(まとめ)

今回は電圧降下式の厳密式と近似式の使い分けについて解説しました。ポイントをまとめます。

  • 3種では近似式を使いましょう
  • 1種二次試験では厳密式を使いましょう
  • 2種二次試験では①相差角が小さい、②線路亘長が短い、③\(X\cos{\theta} - R\sin{\theta}\)の値が簡単に計算できて0に近い、のどれにも該当しない場合は厳密式を使いましょう

しっかり使い分けていきましょう!

-共通, 電験
-, , , ,